マラソン
マラソンとは、42.195kmを走り抜ける長距離レースのこと。人類が自らの意思で苦しむために発明したスポーツの一種である。
誰が考えたか、「歩くだけでも辛い距離を、わざわざ走って競おう」という崇高(とも言い難い)な精神から生まれたマラソン。紀元前のギリシャ伝説に由来するとか何とかいうが、現代では「健康のため」とか言いながら、翌日階段を這い上がる羽目になる大人たちの自己満足イベントとして定着している。特に「完走タイム」は、SNSに投稿するためだけに存在する指標と言っても過言ではない。しかも、なぜか30km過ぎたあたりで「人生観が変わった」とか言い出す人が続出する。走るだけで悟りを開けるなら、坐禅は要らないはずだが。
マラソンの醍醐味は、参加者が一様に「二度と出ない」と誓いながら、数年後またエントリーしていることだ。まるで辛い恋愛のようである。また、給水所では「スポーツドリンクを飲むか、顔に浴びるか」という重大な選択を迫られる。後者を選ぶと、砂糖まみれのTシャツがべとつくというおまけ付き。さらに、沿道の応援はありがたいが、「あと少し!」という嘘の励ましが5km続くのはちょっとした拷問だ。
もちろん、マラソンは健康に良い……はずだ。が、練習をサボって当日いきなり走り出す「謎の勇者」も少なくない。彼らの脚は翌日、まるでコンクリートで固められたかのように動かなくなる。そして医者に「無理は禁物です」と言われ、次の大会の申し込み画面を既に開いているのだから人間とは不思議な生き物である。
マラソンの真の教訓? 「42.195km走るより、タクシーに乗った方が安上がり」かもしれない。でもそれでは、悔しさと達成感の入り混じったあの表情は生まれないのだ。
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